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ロシア伝統の歌声 国立モスクワ・合唱芸術アカデミー

ロシア伝統のアカペラ

 

 ロシアの合唱芸術が発展するきっかけとなったのは、 今から約1000年前の東方正教会の受容による。 15~16世紀には皇帝やロシア正教会総主教の修道士により編成された専属合唱団が誕生した。 なかでもモスクワのロシア正教会宗務院付属合唱団とサンクトペテルブルクの王立アカペラ歌唱団が名高く、 ロシアの合唱芸術の伝統を形作っていった。しかし、革命とともに宗務院付属合唱団が閉鎖され、 合唱芸術を継承する担い手が失われてしまった。

 伝統の合唱芸術が本格的に復活したのは、今回紹介する国立モスクワ・ 合唱芸術アカデミーの原型となった、AV・スヴェシュニコフによるモスクワ合唱学校の設立(1944年)に始まる。

 

 

合唱芸術アカデミー

 

 スヴェシュニコフの合唱学校は、教育ばかりではなく、公演活動もし、 無伴奏のアカペラのほかにオーケストラとの共演などでも活躍した。以来、合唱芸術の発展に貢献し続け、1991年には、 ロシアの歴史でも初めてという、大学として国立モスクワ・合唱芸術アカデミーに生まれ変わった。

 このアカデミーから多くの作曲家をはじめ、 合唱団やオーケストラの指揮者など多くの芸術家が輩出された。歌手ではボリショイ劇場のソリスト、フセヴォロド・グリヴノフ、 ヒューストン・オペラのニコライ・ジデンコなどもアカデミーの出身だ。

 現在、 合唱芸術アカデミーは、AV・スヴェシュニコフ記念合唱学校と大学部に分かれている。 学生総数は約300人。合唱学校は11年制で、6~9歳の少年達が入学できる。少年たちは、合唱、フォルテピアノ、 ソルフェージュ、声楽、声楽アンサンブル、指揮学、音楽文献学などの専門科目を学ぶ。

 

 

健康な体に宿る歌唱力

 

 ニコライ校長は「声楽は体自体が楽器なのです。歌うことは、 健康であることがもちろん重要です。咽喉、肺、腹筋はもとより、体のあらゆる臓器、筋肉を駆使します。 そのバランスがとれた体から美しい歌声を発声するのです。 わが校では体育は必須科目。合唱は一人では成り立ちません。そのチームワークこそスポーツから学ぶべきもの。 もちろん全校内禁煙、 食事も重要な要素。学食は充実しています。カロリーだけでなく、刺激物も極力避ける工夫をしています。 規則正しい健康的な生活が素晴らしいアカペラを生み出し支えるのです」と力説した。

 大学部の学生数は約120人。指揮・ 合唱学部と声楽芸術学部の2つの学部があり、5年をかけて合唱、声楽、オペラ、歌謡などを学ぶ。指揮・合唱学部は、 主に男子学生が学び、声楽芸術学部では主に女子学生が学ぶ。さらに3年制の大学院もある。

 各学年に室内合唱団と声楽アンサンブルが結成されているのが特徴で、 合唱団の総員数は約250名。7~14歳の少年、17~18歳の青年合唱団、 18~25歳までの男子と女子学生を集めた学生合唱声楽アンサンブルは、広くロシアの国内外で活躍している。 ヨーロッパ諸国やアメリカ、カナダ、日本、台湾での公演も好評だ。