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美容室チェーン店 ビューティーサロン・ペルソナ

名実共にモスクワ一の美容室

 

 ビューティーサロン・ペルソナの名前は、お客一人ひとりのそれぞれの 「ペルソナ=個性」を演出するという意味が込められ、お客のイメージを総合演出することが美容室としてのコンセプトだ。

 モスクワ市内の1軒から始まった店は絶大な人気を博し、支店が増えていき、 現在は市場一位の規模を持つモスクワでもっとも人気のある高級美容室チェーンとなった。

 また、 美容室のほかにテレビなどのタレント向けにイメージの演出を助ける「イメージ作り工房」や専用の美容師、 スタイリストの養成学校も経営し、年商は2000万ドル(約17億6000万円、レート換算:1ドル=約30.5ルーブル)に上る。

 ペルソナを設立したイーゴリ・ストヤノフ氏自身は美容師ではなく、 美容ビジネスに特別の野心をもっていた訳でもない。ビューティーサロン・チェーンの設立の発端も偶然だという。

 

 

高級美容室の発足

 

 15年ほど前のロシアに、新興富裕層が出現し、車や住宅、家具、衣服、 有名ブランド化粧品など高級品が飛ぶように売れた時代、高級美容室に対する需要が生まれ始めた時代にさかのぼる。

 ストヤノフ氏は、 「美容室経営というビジネスの始まりは全く偶然に始まったことで、わたしが意識的に目指したものではありません。 商売のまともなやり方などロシアで誰も知らない時代に始まったもので、たまたまそれが美容業だったのです。

 当時 (1994年)ロシアでは、1ドルほどで利用できる一般的な美容室と、 1回で100ドルを払うようなごく僅かの超高級美容室の2種類しかありませんでした。

 このような時代に、 わたしは30ドル程度で高級クラスのサービスを提供できるビューティーサロン・ペルソナの最初の店を開業しました。

 これは価格としては型破りなものでしたが、 欧米の価格に慣れているモスクワ在住の外国人や若者に直ぐに受け入れられました。

 また、 若者をターゲットにした音楽専用のMTVチャンネルロシア版とMusTVに、 出演者のイメージ作りをわたしたちの美容師とスタイリストが担当することを申し出て、彼らに協力しました。 これは若者向けの大きな宣伝になりました。

 1998年のロシア通貨切り下げ危機のときは、 価格を抑えざるを得ませんでしたが、その後ロシア経済の回復とともに順調に成長してきました。

 今回の世界経済危機の影響は決して小さなものではありません。 顧客数は以前に比べて40%ほどの減少です。例えば以前1ヶ月に1回訪れていたお客様が3ヶ月に1回になったというような状況です。 わたしは、先の通貨危機を経験していますからそのデジャビュのように感じました。

 しかし、 前回同様、この危機は新しい傾向が始まるきっかけと受け取っています。

 超高級クラスとビジネスクラス層へのサービスは市場の限界に達したとみています。 ブランドによってアイデンティティーを求める時代はもはや去ったと思います」とストヤノフ氏は言う。

 開業以来ペルソナは、常に流行の高級ブランドであったのだが、 世界経済危機に突入する少し前あたりからストヤノフ氏は敏感に時代の空気の変化を感じ取り、 富裕層が期待する高価なサービスの提供という戦略を改め始めた。

 

 

美容室の今後の方向性

 

 「これからの時代は他人を気にして見栄を張るのではなく、 もっとお客様一人ひとりの個性を生かすものが必要とされるでしょう。本来、ヘアスタイルも、服も、食べ物も、 毎日の普段着的なカジュアルなものであるべきなのだと思います。高級感を売り物にしている場合、 その商品やサービスは個性を生かすものではありません。そのサービスは多くの人々に開かれたものではない上に、 多くの人々がそれを享受できるようになると、その意味も廃れてしまうのです。

 今の人々は、 高級感が売り物の派手な美容師のところに通うのではなく、十分なサービスを提供してくれる“普通”の美容師を必要としているのです。 世界的経済危機の時代にあっては、この当り前の、普通の、そして十分なサービスという原則が一層重要なものになってきます」 とストヤノフ氏は続ける。

 

 

美容室とは、 お客の期待に応える場

 

 「美容室を訪れるお客様は、 何よりも自分のイメージに対して期待を持っているものです。それともう一つの期待は、美容室がかもし出す雰囲気でしょう。 美容室でお客様がどのように自分を感じるか、この場でどれだけ肯定的なエネルギーを得られるかというのが期待の内容です。 つまり、わたしたちは人々に期待感を提供しているのです。お客様が得る満足感は、美容師が作り出すものなのです」

 このため、 ペルソナでは美容師やスタイリストを養成する学校も設けた。技術のほかにお客との付き合い方など接客指導にも力を入れている。  

 最近、 この美容師・スタイリスト養成学校の入学希望者が急増している。ロシアでも現在就職難という社会現象が現れており、 手に技術を持っておきたいということから特に男性の入学希望者が増えている。

 「最近の入学希望者の約80%は、 25歳以上のすでに別の仕事の経験がある社会人です。例えば一流企業のサラリーマンやOLなど、 経済危機により失職した人などが増えています。彼らは、パソコンや書類からではなく、 お客様一人ひとりから直接喜びのエネルギーを得ることができることに大きな魅力を感じているようです。美容師の職業というのは、 とても分かり易いものです」

 ストヤノフ氏自身も2009年1月、技術を勉強し、 市内のペルソナの美容室でお客のカットを手がけてみた。「自分でお客様に対してみて、初めて美容師の難しさを理解しました。 といってもわたしのはほんの基礎技術でクリエーティブなレベルとはいえません。

 この世界で本当のプロフェッショナルになるには、 美容師という職業が本当に好きでなければできないことなのです」

 一見派手に見える美容業界だが、 たゆまぬ努力がなければマスタークラスに到達するのは難しい。

 ロシアに定着した「サービスのよい普通の美容室」 が今後も発展していくのはストヤノフ氏の手腕にかかっている。

 

※右上の写真はインタビューに答えるストヤノフ氏