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ラゾフスキー自然保護区

ラゾフスキー自然保護区 

 

 ラゾフスキー自然保護区は、 世界遺産に登録されているロシア極東のシホテ・アリン山脈の南東部山岳地帯に位置する国定自然公園。

 

 最高標高1379メートル。 起伏の多い複雑な山並みと、海が近いということから、温帯、亜熱帯の植物やタイガ、 ツンドラ地域の植物が共存するという独特な自然環境を作り出している。この貴重な生態系を保護するため、1935年、シホテ・ アリン自然保護区ラゾフスキー支部として誕生したのが保護区の始まりである。

 

 保護区の総面積は約12万ヘクタール。大半をシホテ・アリン山脈南東部の傾斜地帯が占めており、 そのほか日本海に浮かぶ小島ペトロフ島とベリツホ島とその対岸部を含んでいる。公園内には確定された植物類だけでも1284種の植物、 285種の苔状植物、775種の水草類、407種の地衣類、1189種の菌糸類などがあり、 沿海州全体の植物種の約60%がこの地域に見られる。鳥類は368種、魚類は18種、 哺乳類は60種。絶滅が懸念されているアムール虎(公園内に14頭)のほか、アムール豹、アムールゴラール(羚羊の一種)、 ウスリー縞鹿なども生息している。

 

※ 写真はアナグマ

 

 

 

 

探検家アルセーニエフも記す

 

 ラゾフスキー自然保護区の独特な動植物群は、19世紀後半よりすでに知られていた。黒澤明監督の映画『デルス・ ウザーラ』の著者で、有名なロシアの探険家アルセーニエフも、現在のラゾフスキー自然保護区の地域について記している。

 

 保護区はウラジオストクから北東に約300キロメートル。 ラゾ峠を越えてさらに40キロメートルも行くと自然保護区の管理事務所と博物館のあるラゾという町に着く。 管理事務所は小さいが宿泊施設も兼ねている。

 

 

ロシア極東のミステリーゾーン ペトロフ島

 

 管理事務所があるラゾの町から車で70キロメートルほど北方にキーエフカ村があり、 村から10キロメートルほど先の海にペトロフ島という無人島がある。日本海に浮かぶ周囲4キロメートルにも充たない美しい小島だ。 西岸は比較的なだらかだが東岸は切り立った峻厳な崖。対岸の管理小屋のほかにはまったく人気がなく、 あたりは絶海の孤島という雰囲気だ。

 

 島へはモーターボートで渡る。 ペトロフ島は、樹齢1200年という温帯性の常緑針葉樹イチイの群生森で有名である。一説によれば、このイチイの森は、 かつて渤海人によって植樹された祈祷の場所であったと推測されている。 渤海人により木々は漢字で5つの文字を描くように植えられたともいわれている。

 

 また、13世紀、 蒙古軍に追われた女真族系の金王朝が逃げ込んだ最後の砦であったとの伝説がある。

 その後も、 イロウと呼ばれる中国の海賊たちが、この島を拠点として、一説によれば日本の沿岸にまで出没していた。彼らもいつしか姿を消し、 19世紀にロシア人の探検家が到来したときにはすでに無人であった。

 

 言い伝えとなっているこれらの遺構は、深い森の中に埋もれている。しかし、 島の西岸の低い部分は注意して見ると石積みに覆われており、自然保護区副所長のグリエフ氏によれば、 切り立った東岸と共に堅牢な要塞をなしていた名残りだという。

 

 まったく人気はないのだが、 森を歩いていると、誰かに見守られているような不思議な感覚になる。 遠くの木々の背後に古代人がいるような時空を超えたミステリーゾーンのようだ。

 

 島には、 他にも樹齢数百年のさまざまな野生の朝鮮人参類などの希少植物があふれ、自然の宝庫である。

 

 

ラゾフスキー自然保護区の魅力を語る

 

 ラゾフスキー自然保護区の副所長ドミートリー・グリエフ氏に保護区を案内してもらいながら、話を伺った。 グリエフ氏はイルクーツクの出身だが、沿海地方の自然と海に魅せられて、ラゾフスキー自然保護区に就職し、 2006年から現職に就いている。

 

  「ラゾフスキー自然公園はこの地域に生息する稀少な動植物と環境の保護のために設けられたものです。私の仕事は、主に環境保全、 動植物研究活動、エコロジー啓蒙活動の3つです。エコロジー啓蒙活動は、 学生たちにエコロジーをテーマにした野外学習を行っています。若い世代に自然との付き合い方を教え、 それを通して自分の住んでいる自然環境を大切にすることを教えます。自然の中で正しく行動すること、つまり自然を汚さず、 怪我などをせずに自然と親しむことです。学校の生徒は地元の生徒だけでなくウラジオストクやナホトカなどの都市からもきます。 また、野外学習には大人も参加します。ほかにも自然保護区にある企業の職員などに自然に関する講義も行っています。

 ペトロフ島へ入ることはなかなか大変で、誰でも島へ行けるわけではありませんが、 観光シーズンにはエコロジー啓蒙ツアーなども実施してます。道路も一部はまだ未舗装ですが、 冒険好きな人にはたまらない魅力があるようです。特に、ヴェニェスキーとイェラモーフスキーの二つの美しい滝、 そしてペトロフ島が人気があります」

 

 

 

ペトロフ島では生態系を保護するため、 島の散策は特別のルートに沿って専門のガイドによるグループに限られる。 訪問はウラジオストク等の観光会社かラゾフスキー自然保護区の管理事務所に直接申し込む。