ロシアの生活・料理・人・文化などをご紹介|元気なロシアの今を伝える"ユーラシアビュー"

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カザフ民族の伝統文化と生活

動物飼育農場

 

 カザフ人にとって、馬への憧憬の念は限りなく強い。カザフスタンの政治家、 軍人、ビジネスマンなどのエリートたちは、ステータスシンボルとして自分の馬を持ち、郊外の農場で飼育させている人も多い。 馬を所有することは今もカザフ人として本来あるべき正しい生活のあり方だと考えているのだ。

 

 アルマティから南西に35キロメートルほど離れた地に動物飼育農場がある。 農場を経営するシマチェクさん夫妻は、現代のカザフスタンの都会人のニーズに応えて、農場で馬を預かり、飼育している。 ほかにも馬の貸出しをしたり、観光用にカザフスタンのシンボルである大角鹿をはじめ、ラクダ、ダチョウなども飼育している。 休日に車で農場を訪れ、平原を馬で駆けるのはカザフ人の大いなる楽しみなのである。

 

 

クムィス (馬乳酒)を作る農場

 

 カザフスタンの食事に付き物なのが「クムィス」という馬乳発酵飲料だ。 酸味が強く泡立っていて、かなりクセが強い飲み物だが、飲んでいるうちに不思議と慣れてくる。肝臓病や胃腸に良いといわれ、 なんと言っても消化に良く、肉料理の多いカザフ料理を食べていてもクムィスを飲んでいればおなかを壊すことはない。 わずかにアルコール分(2%ほど)があるので運転の前は飲んではいけないという。 スーパーマーケットやキオスクなどどこでもクムィスのボトルが売られているが、 大抵の人は実際に馬を飼育している知人に譲ってもらったり、手づくりの業者から買ったりということが多い。本物のクムィスは 「家庭の手作り」がいい、と考えられているようだ。この本物のクムィスを作っているクムィス農場を訪ねてみよう。

 

アルマティからキルギスへ向かう幹線道路を40キロメートルほど行ったところに農場がある。 主人のカイラトゥ・マハノフさんは43歳。家族は妻と5人の娘と息子のアイサルちゃん。30人ほどの従業員が働く。 農場としては中規模程度の大きさだ。

 マハノフさんは、以前は街で商売を営んでいたが、 7年前から本格的にクムィス製造を始め、2年の準備期間を経て経営を軌道に乗せた。現在は、馬100頭、 ラクダ200頭ほどを飼育している。馬は、アルタイ種、カザフ種、キルギス種、コスタナイ種などさまざまな種類がいる。 ラクダは10キロメートルほど先の平原で放牧しているという。

 

「100頭の馬のうち60頭ほどを常に乳を出す状態にして、毎日2時間おきに7回絞ります。1回の搾乳量は1. 5~2リットルほどで、1頭につき毎日10リットルほど搾乳できます。 搾乳は子馬が生まれる春から秋の終わりまで6カ月間ほど行います」

 

 馬乳は木造の「クブ」という攪拌用の桶でかき混ぜて発酵させる。 発酵した状態のものを大きな攪拌棒でかき回す、かなり力のいる作業だ。しかし、マハノフさんによれば、 機械を使わずこうして手で攪拌しなければ本物のクムィスではないという。およそ3000回ほどの攪拌が必要で、 2~3日かけて攪拌する。

 

 こうして作ったクムィスは、 農場に併設されているマハノフさん経営のレストランで料理と共に出されている。

 

 

カザフ伝統の飲料

 

 マハノフさんのレストランは、伝統の移動式テント「ユルタ」 を5つ建てたもの。ユルタを使ったレストラン内部は、夏は涼しく冬は暖かい。ユルタの中で寝転んでクムィスやシュバット (ラクダの発酵乳飲料)を飲むことこそカザフ人たる醍醐味だという。

 

「期間中は毎日、クムィス250リットル、シュバット300リットルをレストランに出していますが、 なんといっても新鮮な馬乳サウマウが一番のお薦めです」とマハノフさんは言う。

 

「サウマウは絞って3日以内の新鮮な馬乳のことです。この3日間は、馬乳に含まれる成分が豊富なので、非常に健康に良いのです。 結核や胃腸や十二指腸の潰瘍、糖尿病、癌など、何にでも効果があると言われています。抗体を強化するのです。 これはカザフスタンやロシアの学者たちが効能を証明しています。それと抜群の若返り効果もあると言われています。しかし、 絞りたてでないとならないので街では簡単には飲めません。このためにアルマティの住人がわざわざ郊外のここまで車でやってくるのです。

 

 馬の餌には干草のほか、牧草地のクローバーや牧草を与えています。 牧草地にはヨモギや黒ヨモギなどたくさんの薬草が生えており、 馬たちはこれらを餌にしているので私の農場のサウマウは特に効果があって人気があるのです」

とマハノフさんは胸を張って言う。

 

 

カザフ伝統の料理

 

 中央アジアのなかでも遊牧民だったカザフ人のごちそうはなんといっても肉。 主に馬肉と羊肉で、特に馬肉は都市の住人でも1週間に2回は食べるという。肉の消費量は世界で1、2を争うといわれるほどだ。 カザフ料理は中央アジア全体に共通する料理が多いがカザフ料理ならではのものを以下に紹介しよう。

 

● ベシュバルマック

 薄い麺を敷き、その上に塩味をつけた羊肉または馬肉を茹でてのせ、 タマネギのスライスを添える。さっぱりとして美味しい。

 

● カルイン・ サン

 仔羊の内臓とパプリカなどの野菜を炒めたもの。唐辛子を効かせた辛味で、 ナン(イーストを入れずに窯で焼く平らなパン)にのせて食べる。

 

● カズ

 カザフ人の大好物「カズ」は、馬肉の腸詰め。馬肉に塩、コショウ、 ニンニクをまぶして腸に詰めて2~3時間弱火で茹でる。このときカルタ(胃袋)もいっしょに鍋で茹でる。

 

 ほかに中央アジア全体に共通するプロフ(炊き込みピラフ)、ラグマン (うどん。カザフ風はトマト味のスープが多い)、サムサ(パイ)、マントウ(蒸した肉饅頭)などがカザフの代表的な料理である。

 

 

※写真上、動物飼育農場の馬とシマチェクさん
※写真上から2~3枚目は、カザフ伝統の移動式テントのユルタを使ったレストランとその内部
※写真下、カザフの伝統料理、中央は馬肉の腸詰め「カズ」